近年、人生観や価値観の多様化にともない宗教的無輸血治療の希望や延命治療の拒否など治療に関するさまざまな希望があります。これらに対応すべくいろいろなガイドラインが作成されていますが、基本的には患者本人の治療に関する意思の表示に基づいて対応することが求められます。しかしながら、重症脳卒中急性期においては意識障害のため本人の発病前の意思確認をすることが困難で、ガイドラインに則った対応が困難な状況が少なからず発生します。つまり投入できる人材や時間に限りのある脳卒中救急現場では法的・生命倫理的な判断に苦慮する事例にしばしば遭遇します。

これらに対応すべく厚生労働省循環器病研究委託費 20指2および循環器病研究開発費 22-4-1「重症脳卒中における生命倫理に関する研究(主任研究者 宮本 享)」では急性期脳卒中臨床現場における不要な混乱を防ぎ臨床医がわかりやすく判断できるような対応策を検討してきました。

このマニュアルはその研究結果の一部をまとめ、宗教的無輸血治療の希望に対して法的・生命倫理的な考察を加えた対応マニュアルとなっています。本マニュアルの内容は社団法人日本脳神経外科学会および社団法人 日本脳卒中学会の理事会で承認されています。なお、当該事例に対する対応や判断は各施設の裁量に委ねられておりますので、必要に応じてこのマニュアルを参考にしてください。

資料

重症脳卒中における生命倫理に関する研究(主任研究者) 宮本 享