東日本大震災避難者住環境整備の取り組み
Disaster victim Care Unit (DCU)

1. はじめに

今回の東日本大震災では2000か所を超える避難所で、20万人近くの被災者の方が避難者生活を送られています。
徐々に物資が充足し、ライフラインの一部が回復している地域も増えていますが、いまだ不便な生活を強いられています。
仮設住宅の建設や他地域への移動も始まっていますが、避難者の方全員が落ち着いた生活環境を手に入れるまで現在の避難所での生活が当面の間続くものと思われ、その間の避難所の環境改善に視点を持つ被災者支援が必要と考えました。
そこで体育館やホールなど大きな空間で多人数が過ごしている被災者の方が少しでも落ち着いて過ごせるよう避難所にパネルでブースを作り、傷病者の方が暖かい環境で過ごせるよう、またそれぞれのご家族が多少でも他の方からの視線を遮ることができるよう配慮した避難所の環境改善支援(Disaster victim Care Unit 構想)を行いました。これは、寒い住環境で生じやすい脳卒中の予防、大勢の人が集まる空間を仕切ることでインフルエンザの流行予防に効果があると考え、日本脳神経外科学会として取り組む支援事業にふさわしいものと思われます。
今後被災地の要望に併せて多くの支援ができるよう継続的な支援モデルを構築したいと考えています。

2. 支援モデル

報道などによると、現在の避難所として体育館や大型ホールなど、床面積が大きく、天井が高い建物が多く使われています。このような建物構造は大人数を一時的に収容するのには適していますが、居住空間としては次のような短所も持っています。

1. 空間が大きく暖房効率が低い
2. 床が冷たく、固い
3. プライバシーを確保できない

これらの問題を解決するには、大きなホール、避難所を細かく仕切って、かつ天井を低くする必要があります。
しかしながら、一時的な使用で本来の使用目的と異なること、現在多くの避難者がいらっしゃること、避難者の数が日々代わるといった避難所の現状を踏まえると、避難者の住環境整備には次のような要素が必要であると考えられます。

1. 避難者がいらっしゃる状態で短時間に設置できること
2. 原状復帰が簡易であること
3. 用途に応じて適切な大きさに空間を仕切れること
4. 余震などに耐えうる構造強度を有すること
5. プライバシーをある程度確保できること
6. 暖房効率が多少なりとも良くなること

以上の要素を満たす環境整備の方策として、学術集会などで使用される機器展示やポスター発表のブースで用いられるパーティションを活用する以下の方法を提案しました。
パーティションの大きさを組み合わせることにより、必要に応じた空間の仕切りが可能となります。高さも調節可能です。パーティション上部を布などで塞ぎ暖房効率を高めることも可能です。寒冷対策としてボードを用いて床を作り、その床下に温風を供給することで簡易式の床暖房が得られます。

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DCU設置報告書

(社)日本脳神経外科学会
理事長 寺本 明 殿

(社)日本脳神経外科学会の支援事業の一環として行った下記の事業をここにご報告させていただきます。

—–記—–

日時:4月7日(木) 10時―15時
設置場所:福島県伊達市霊山中央公民館体育館
福島県伊達市霊山町掛田字西裏17
設置ブース数:40ブース
1.8×2.4m 高さ0.9m 20ブース
1.8×3.6m 高さ0.9m 20ブース
担当者:立会および現地との調整:信州大学医学部脳神経外科 児玉邦彦
施工:ドゥ・コンベンション株式会社 10名

福島県伊達市は中通り(福島県内陸部)に位置し、地震そのものによる被害は少なかった。
4月7日現在、伊達市内で500名の市外からの避難者を受け入れている。避難所は現在、7か所あり、おもな避難者は南相馬市、浪江町など沿岸部(浜通り)から、原子力発電所災害関連による避難対象地域となっている地域からで占められている。
避難生活は1カ月になろうとしているが、福島県が提案する会津地方への二次避難を希望する避難者は少ないとの話であった。仮設住宅への移住などの具体化しておらず、現在の避難者の大部分が月単位で残留せざるを得ない情勢である。住環境は別図のごとく、一つの広いアリーナに、段ボールを敷き、その上に毛布を敷き、200人程度が生活をしている。暖房は6個の据え置きストーブで行っているが、アリーナ入口から吹き込む風により床面近くは底冷えしていた。広い空間での集団生活のため、インフルエンザが流行しており、感染者の隔離と感染拡大予防対策が急務とのことであった。食事や医療の体制が整いつつあるが、長期化の可能性が高い現況では住環境整備にも注力が必要な状態と思われた。高齢者も多く、避難者と面談する保健師からは、「人目が気になる」との避難者の声が多く、プライバシーの配慮が現状では不十分であるとうかがえた。

避難所の運営は、伊達市が避難者のホストとして施設の提供、物品の調達を行い、避難者の出身自治体である南相馬市が、おもにソフト面の運用をしているとのことであった。避難者を4グループに分けて、炊き出しや清掃を当番制で行うシステムができていた。

伊達市としては、避難所を3か所程度に集約化する方針で、今回DCUを設置した霊山中央公民館体育館もそのうちのひとつであった。

今回はDCUに付随して、メッセージボード(高さ 2.1 m)を設置し、応援メッセージを貼付した。これは掲示板としての利用も可能である。メッセージに見入る様子があり、避難者には好評であった。
このメッセージボートをアリーナ入口近くに設置すると、
外部からの冷風避け掲示板応援メッセージ貼付場所として有効であった。

信州大学医学部脳神経外科
本郷一博・児玉邦彦

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施行前

施行中

施行後

以上